その頃は本当にお金が無かったので、イチかバチか、食べるのを我慢して画材を買って、すぐに色を塗りました。そしたらほんまに世界がちょっと変わって見えたんです。それ以来、僕は色というものが持っている力に夢中になりました。それがきっかけで絵にも目覚めて、24歳のときに路上の画家からスタートしました。
今は路上で描くことは無くなったけれど、色の力を信じる気持ちはずっと変わっていません。このことについて今までじっくり考えることはほとんど無かったんですけど、最近、当時の僕が色の魅力に夢中になったのって、沖縄という住環境と無関係ではなかったんだろうなぁと思うようになってきました。
沖縄って、年中鮮やかな色彩に溢れているんです。真冬でもハイビスカスがあちこちに咲いているし、木々の緑も一年を通して豊か。海の色も空の色もどこまでも鮮明で、それを沖縄独特の、白っぽい強い日差しが照らすから、景色はいつもまぶしいほどです。
きっと、あの日の僕がコンクリートブロックに色を塗ろうと思ったのは偶然ではなくて、10代で僕が沖縄に住むようになってから、無意識のうちに自分の中に蓄積してきた沖縄の明るさや自然の色彩というものが、一気に溢れ出した瞬間だったんだと思います。そう思うと、沖縄という環境が僕を画家にしてくれたと言っても過言ではありません。沖縄に住んでて本当に良かったなぁって思うし、沖縄に心から感謝しています。